田中千代・民俗衣装・コレクション

エジプト・アラブ共和国 (Arab Republic Egypt)
カイロ (Cairo)



[衣装名] ミラエ・アルリフ

 これはエジプトのミラエ・アルリフ(Milayeh Al-Liff)と呼ばれる婦人服である。回教の掟にしばられた服であるばかりでなく、現代生活に適さないので、この国がアラブ連合共和国になってから、大いに批判の的になっている。
 しかしたやすく捨て去れないものと見え、地方ではまだ殆どこれを着ている。(1960年)
 布地は木綿も絹も用いられるが、これはクレープ風の黒絹地を用い、75cm×250cmの布を2枚接ぎ合せて矩形に仕立てられ、片端に房がある。房の近くの接ぎ目の上に1mの共布の紐が2本付けてある。

 着方は端に房のある方が左にくるようにして布を頭に被り、紐を左右に分けて、胴に結びつける。次に左の裾を左手にとって上にあげ、右手で右の裾をとり、合せて左の脇の下に挟みこむ。これでずるずるしていた布が始めて安定する。最後に右手と左手でそれぞれ胸の上に布を合せる。まことに不安定な着付けである。回教徒として顔を隠すためのベールには新旧2種がある。一つは男物の絹のネクタイの総丈の中央辺りに10cm間隔に紐が3本付き、それから黒のレース糸で編まれた粗めのネットが胸前に細長く垂れ下がっている。これを左図のように着るのである。女性の美しさが瞳の一点に集結されて妖しい魅力があるとも言われる。
 もう一つは23cm×36cmの黒のチュ−ル、これは近代女性用の改良型で、ゴム紐で顎の下から両耳を押さえるように着ける。(右、部分図)

ミラエ・アルリフ
(150cm×250cm)
覆面 (ボロー) 覆面 (改良型)

エジプト・アラブ共和国 (Arab Republic Egypt)



(1964年収集)

[衣装の構成]

左 男性 
外衣
 (ガラビア galabeya)
帽子
 (タエイヤ takya)

右 女性
外衣
 (ガラビア galabeya)
スカーフ
 (タルハ tarha)
覆面
 (ボロー borro) 

 エジプト、現在のアラブ連合共和国はイスラム文化の中心と考えているが、文化国民指導省が、民族文化を保護すると同時に、国民生活全般の近代化をはかっているので、大都市ではほとんどイスラム固有の服装が見られなくなった。
 この男性は背広の上にガラビアを着、タエイヤ(帽子) をかぶっている。この姿はカイロ市のハンハリ地区などではよく見かける。イラクのアバにあたる女の黒衣をミラエと呼ぶがこれもカイロ市の一部では見られる。
 この女性はガラビアを着、タルハ (スカーフ) を巻き、ボロー (一種の覆面) をしているが、これは砂漠の遊牧民ベドインの風習である。エジプトの北部ではイスラムの風習としての女の覆面は19世紀の中ごろまでは厳しく守られ、眼の下から裾まで長い黒のヴェールを垂れ、鼻筋に金属製の飾りを付けていた。このヴェールは次第に短くなり、顔の部分は網目ですかすようになり、改良の長い過程を経て、ついに消え去ったのである。
 ナイル河をさかのぼってルクソール・アスワンあたりの古代の遺跡を訪ねれば白木綿の粗末なガラビアを着た男性や、木綿、麻、モスリンなどのミエラを着て驢馬に乗って行く女性の姿を見かけるのは普通である。


外衣 (ガラビア) 女性用 スカーフ (タルハ) 覆面 (ボロー)

男性用ガラビア 男性用帽子 (タエイヤ)