田中千代・民俗衣装・コレクション

メキシコ (Mexico)
チャパス洲 (Chiapas)


(1957年収集)

[衣装の構成]
シャツ
 (カミサ camisa スペイン語)
半ズボン
(カルソン calzón スペイン語)
首巻
 (スート sut)
上衣
 (コトン coton)
帽子 (ソンブレロ )

 これはチャパス洲シナカンタン (Zinacantan) のツォツィル族 (Tzotzil) 男性の服である。カミサは厚手木綿で作られ、肩を輪に、袖付けから脇線にかけて直線裁ちになり、服巾57cm、丈48cm、袖は袖山を輪に、巾18cm、丈35cmの筒袖である。
 半ズボンはスペイン語でカルソンと呼ばれ、カミサと共布で、巾35cm、丈72cmの布を用い、股上と股下は刳りがなく直線になり、両脇と股下25cm、後股上を縫い合わせ、前股上は股下より5cm上まで縫い合わせ、その上は開いている。
 一番上に羽織っているのは手織厚手木綿の布で作った「コトン」と呼ばれる上衣、巾35cm、丈138cmの2枚の布を接ぎ合せたポンチョ型である。作り方は丈で二つ折りにした折山を肩にして、前後中央で折り山より13cmを衿あきに残して縫い合わすが、脇は縫い合わさず、肩山から28cmと、裾から6cm上の二箇所をそれぞれ毛糸のループで綴りあわせておく。裾は5cmの房になり、前後裾の2cm上に毛糸でさした横縞がある。 
 首巻はスートと呼ばれ、黒白のピン・チェックの木綿で、四隅に牡丹色の毛糸の房が付く。スートは首に巻いて房を前に垂らす。ソンブレロを被らないときは、末端に毛糸の房の付いた赤い布をターバンのように頭に巻く。
 脚にはカイテス (caites) と呼ぶ特殊なサンダルを履く (本図では履いていない)。 ツォツィル族は男女とも痩身で姿態が美しく、カルソンを短くはき、長い脛を出した姿は軽快である。


メキシコ (Mexico)
オワハカ洲 (Oaxaca)



(1957年収集)

[衣装の構成]
上衣
 (ウィピル huipil)
下衣
 (エンレド enredo スペイン語で巻スカートの意)


 (ファハ faja)
頭飾り
 (ローデーテ rodete)
ペンダント
 (コリャル collar)
神の目
 (オーホス・デル・ディオス ojos del dios)


オーホス・デル・ディオス



頭飾り (ローデーテ)

 これは美しいウィーピルを主体とする晴着で、数多いメキシコの民俗衣装の中でも傑作の一つである。ウィーピルは178cm×53センチの布を2枚縫い合せたもので、衿明き32cmは縫い残す。両脇も16cmづつ腕を通す穴を残して縫い合わせる。布地は白の手織木綿で平織、肩の部分は畝織である。前後中央と両脇の接ぎ目の上には花模様の刺繍をした13cm巾の別布が縫付けられ、前後の衿明き止まりには、ローズ、黄、白、緑の絹糸を束ねて、中心11cmを三つ編みにして縫付けてある。三つ編みから先は長さ33cmの房が下がる。これは補強を兼ねた装飾である。裾始末は五色の絹糸で、ボタンホール・ステッチでかがってある。
 エンレドはスペイン征服以前からあるインディオのスカートの型である。このエンレドは364cm×90cmの、明るい茶と白の細縞の厚手の手織木綿。巻き方は、只、巻くだけのものと前にプリーツを畳む着方とがある。
 髪飾りはローデーテという。毛糸の束を巻いて作った大きなターバン風のものである。
 帯 (ファハ) は巾7cm、丈156cmで、赤、黄、緑の縞柄の手織り木綿である。
 ペンダント (コリャル) は十字架型の金属製のものである。手に持っているオーホス・デル・ディオスは色毛糸を菱形の竹の枠に巻いたもので、信仰のシンボルである。


メキシコ (Mexico)



(1957年収集)

[衣装の構成]
ケープ風上衣
(ケスケミトル quechquemitl)

下衣
 (エンレド enredo スペイン語で巻スカートの意)

ブラウス
 (カミサ camisa)

 (ファハ faja)
帽子
髪飾り

 この衣装はメキシコ州やプエブラ洲 (Puebla) サン・パブリト周辺のオトミー族 (Otomi) 女性のものである。同じオトミー族でも地域によって衣装がさまざまに異なる。ケスケミトルは73cm×45cmの長方形 (肩に丸みを付けているため、いくらか変形している) の布2枚を縫い合せたものである。上部18cmは横に畝のある白厚手木綿で、黒と牡丹色の毛糸で、様式化された植物や人、鳥、動物の柄のクロス・ステッチが施されている。その下方の牡丹色の毛織部分には肩先にあたるぶぶんに、肩に収まりやすいように織の技法で丸みが付けられている。それは、ラウンド・ショルダー・テクニック (round shoulder technique) と言われる高度な技術である。
 エンレドは目のつんだ白のキャラコで、100cm×340cmの一枚布で、胴回りと裾回りに紺地に青の格子の布が付けられている。巻き方は後右腰から巻き始め、前に深く粗い襞をたたみ、ウエストは帯で押える。ケスケミトルの下に着るカミサは、白の薄手木綿、スクエア・ネックの胸と背の位置に抽象化された動物の模様がビーズで刺繍されている。帽子は木製のお椀型で赤、黒、青緑に塗られ、鳥の模様が描かれている。髪飾りは髪の毛と牡丹色の太い毛糸のコードを一緒に三つ編みにしている。コードの先にはカラフルなビーズを通し、毛糸の小さな房が付いている。メキシコやグァテマラなど中南米では髪の毛に色コードや色布を一緒に編みこんだ姿や、鳥や動物などを抽象化した模様をよく見かける。


ケスケミトル ケスケミトルの下の
ブラウス(カミサ)
帯 (ファハ) 23×300



メキシコ (Mexico)
オワハカ洲 テワンテペック (Oaxaca Tehuantepec)


(1962年収集)

[衣装の構成]
ブラウス
(ウィピル huipil. スペイン語)
スカート
(エナグア enagua スペイン語)
被り物
 (ウィピル・グランデ huipil grande スペイン語)

 これは、この地に住むサポテク族 (Zapotec) の女性の祝祭用の衣装である。木綿で裏打ちされた黒ベルベットに美しい刺繍のあるウィピルとエナグア。白レースで飾られたウィピル・グランデを頭から被るという華やかな組合せである。
 テワーナ (Tehuana テワンテペックの女性) のこの衣装の中で、最も壮麗で中心的なものが赤と黒のレースを、のり付けされた白レースで縁取ったウィピル・グランデ (grandeはスペイン語で大きな、華やかな、の意) である。これはウィピルといってもブラウスとして着るものでなく、頭に被るものである。衿明きのように丸くカットされた周囲50cm位の上部の穴から顔を出す。又、全体が白レースで作られたウィピル・グランデもある。特異な飾りとして、細長い筒状の白いレースが前後に一本づつ付く。この飾りの起源は、サンタクルツの海岸でスペインの難破船のトランクの中から発見されたベビー・ドレスの袖であると推測されている。
 このウィピル・グランデには二通りの着方がある。
1 主に教会用で、この図のような着方で、衿明きから顔を出し、小さな袖型の飾りは前後中央に据える。(上図)
2 他に祝祭用で裾部分の白いラッフルを頭に被り、耳の位置で留め、残りのラッフルと衿部分、袖型の飾りなどすべて後にたらす着方がある。


祝祭用の着方 ウィピル・グランての下で
見えていないブラウス
 (ウィピル)


メキシコ (Mexico)


(1958年収集)

[衣装の構成]
ブラウス

スカート
 (ファルダ falda スペイン語)

肩衣
 (ケチュケミトル quechquemitl スペイン語)

 これは赤いウールのケチュケミトル、厚地木綿のスカートとブラウスを組合わせた現代風民俗衣装である。このケチュケミトルは単純な現代好みのもので、右肩にスナップ明きがある。
 スカートとブラウスはオワハカ洲の工場で織られる多量生産の綿布で、縞模様を織り込み、、手織の味を幾分保たせているので、好評を博している。(1958年工場で入手)
 ブラウスはケチュケミトルで見えていない。

メキシコ (Mexico)
ユカタン州 (Yucatan)


(1940年収集)

[衣装の構成]
ブラウス
 (ブルサ blusa スペイン語)

スカート
 (ファルダ:ザガレホ falda:zagalejo)

ショール

 ユカタン半島 (Yucatan) 一帯に住むマヤ族 (Maya) の服装でチナ・ポブラナ・ドレス (China poblana dres) と呼ばれている。
 このブラウスの白木綿地に紅い花の刺繍は典型的なマヤの図案である。この図案は、みやげ物用のテーブルセンターなどによく使われている。
 ブラウスは衿明きを四角に大きく刳り、前後のヨークの切替の下に細かいタックがたたまれ、服巾が75cmもあるゆったりしたものである。
 スカートは巾95cmの筒型で、赤のフランネルに黒のプリント模様があり、金属製のスパングルで飾られている。緑色の木綿布が胴囲と裾に切替えてある。
 縞柄のショールは巾74cm、丈190cmで、巾を二つ折りにして、両端を縮め、房が付けられている。

ブラウス (ブルサ) スカート
 (ファルダ;ザガレホ)
ショール
(この画像は裏面)

ベルト


メキシコ (Mexico)


(1940年収集)

[衣装の構成]
シャツ
 (カミサ camisa)
ズボン
肩掛け
 (セラペス serapes)
帽子
 (ソンブレロ sombrero)

(衣装名はスペイン語)

 これはチャロ (Charro) 即ちメキシコのカウボーイの服装である。北アメリカ大陸に騎馬を紹介したのはスペインの征服者であり、牛飼いの馬術はメキシコから米国西部に広まったものであるから、これがカウボーイの元祖と言える。このカミサ (シャツ) はベージュの木綿で、左右前端裾に3cm巾で長さ20cmの結び紐が裁ち出されている。前立てと両脇のポケットや背、衿廻りにチェーン・ステッチで刺繍が施され、ポケットと背面に人間の顔を図案化した刺繍がある。
 ズボンは黒ラシャ地の極めてタイトな仕立で、黒革の長靴を履くので、裾口で少し広くしてある。両脇に白革で側章のような飾が付く。この図では脱いでいるがカミサの上にズボンと同様に白革で刺繍した黒ラシャのジャケットを着る。
 ソンブレロは木皮で編まれ、つばが非常に広く、縁が反り上がっている。本図のように黒地のと、他に白地のもある。肩に掛けているのはセラペスと呼ばれる手織の毛織物で、このように飾りとして肩や腕に掛けたりする小型のものから、防寒用に身体を包む毛布、寝具としての毛布、市場で商品を並べる敷物、または棒を立てて天幕を張り、太陽や雨を防ぐのにまて、極めて広い用途がある。セラペスは男だけが使うもので、結婚衣裳としてなくてはならないものだが、死んでは屍を被う布としても用いられる。セラペスは主として男が織る織物である事と、どぎついまでに派手な配色が特色で、大型のものは黒か青地の中央にボカマンガ (bocamanga) と呼ぶダイヤモンド図案を、そして両端に黒白の縞を配するのが普通である。


シャツ (カミサ前) 帽子 (ソンブレロ) 肩掛け (セラペス)


ズボン

カミサ 後


メキシコ (Mexico)
チャパス洲 (Chiapas)

(1957年収集)

[衣装の構成]
ブラウス
 (カミサ camisa )

ペティコート
(エナグワenagua)

スカート
 (ファルダ falda)

(衣装名はスペイン語)

 メキシコの南西端チャパス洲 の、グァテマラ国境に近い地区に住むチャパネコ族 (Chapanecos) の女性の晴着である。
 ファルダは黒のチュール・レースで、五段の切替、丈は110cm、赤、青、紫、オレンジ、ピンクの絹糸でバラの花の図案が刺繍されており、各段の裾端は赤の刺繍糸でスカラップ・ステッチで始末されている。脇明きは20cm、胴回りには5cm巾のベルトが付き、カギホックで留める。
 カミサは黒のサテン地で、巾77cm、丈53cm、直線裁ちで、四角いマチの入った短い袖が付く。大きく刳られた衿ぐりには、スカートと同じ模様のチュールで巾広のラッフルが付き、衿ぐりに付けた黒サテンの縁取りに木綿のコードを通して、寸法の調節をする。これはメキシコ本来のものでなく、西欧のイブニング・ドレスの影響を受けた民俗衣装の一つである。


ブラウス (カミサ) スカート (ファルダ) ペティコート (エナグワ)

メキシコ (Mexico)
ハリスコ洲 (Jalisco)、ナヤリット洲 (Nayarit)


(1957年収集)

[衣装の構成]
ポンチョ型上衣
 (ケスケミトル quechquemitl.)

ブラウス
 (カミサ camisa )
スカート
 (ファルダ falda)
ベルト
 (シンタ cinta)
腕輪
 (プルセラ・チャクイラ pulsera chaquira)
イヤリング
 (アレテス・チャクイラ aretes chaquira)

(衣装名はスペイン語)

 ケスケミトルを中心とする最も典型的なウィチョール族 (Huichol) の女性の衣装である。このケスケミトルは古くからメキシコにある貫頭衣の原型に近いもので、長方形の一枚布である。67cm×134cmの布の2等分の位置で、明きとして端から18cm切込みを入れ、縁取りをする。切込みから18cmを残して下を縫う。右肩を輪に、角を正面にして着る。素材は、やや厚手のマンタ (manta 未晒し木綿) で、赤、黒を基調にしたクロス・ステッチとロング・アームド・クロス・ステッチで刺繍されている。柄は図案化した花や動物、幾何学模様で、ところどころにある未完成な柄は、生活を維持する為の保障と信じられている。ウィチョール族のケスケミトルには、両肩を接ぎ合せたものもある。
 カミサはケスケミトルに隠れて見えないが手縫いで丈が短く、巾が広い。後衿刳りに12cmの明きがある。
 ファルダはカミサと共布で、ケスケミトルよりやや薄手のマンタを使用する。ウエストに細かいタックを取ってある。カミサとファルダにもケスケミトル同様の刺繍が施されている。腰にはシンタ (スペイン語てベルトの意) と言う厚地木綿に紺と紅の毛糸刺繍の入った帯を締める。


ブラウス(カミサ)
丈52cm 裾回り140cm
ポンチョ型上衣ケスケミトル 67cm角 スカート(ファルダ)
丈78cm 裾回り230cm


メキシコ (Mexico)
ハリスコ洲 (Jalisco)、ナヤリット洲 (Nayarit)


(1957年収集)

[衣装の構成]
上衣
 (カミサ・ラワレロ camisa;rahuarero)

ズボン
 (カルソン・サベレス calzón shaveresh)
 ケープ
 (カーパ capa)

 (ファハ faja)

 (シンタ cinta)
飾り帯
 (シンテゥロン・ボルシタスド cinturon bolsitasd)

帽子

(衣装名はスペイン語)

 ウィチョール族はメキシコ中部のハリスコ (Jalisco)、ナヤリット (Nayarit) 両州を中心に住む民族で、男が非常に派手に着飾るのが特色である。
 上衣は未晒しの木綿地で肩は接ぎ目がなく、一枚布の直線裁ちで、衿明きは前後とも深さ13cmに刳られ、赤木綿布で縁取られている。袖は袖山にギャザーを寄せた巾30cmほどの広いもので、脇から袖下は縫い合わされず、袖口から10cmだけ縫い合わされている。ズボンは上衣と共布で出来た脚部の巾が35cmもある太いものである。上衣、ズボン共に動物模様などの面白いクロス・ステッチ刺繍が施されている。一番上に羽織っているケープはカーパと呼ばれ、上衣と共布の75cm平方の布で作られ、2方に縁を白木綿で縁取りした19cm巾の赤毛織布が接がれ、布半面にぎっしりと幾何学模様のクロス・ステッチとロング・アームド・クロス・ステッチが施されている。帯は白と焦げ茶の毛糸で両面に模様を織り出したもので、両端にフリンジが付く。巾10cm、丈3mの物と、巾16cm、丈3mの物と2本締めている。この帯の上にシンタと呼ばれる白地に赤、黄緑、の織込み模様の紐2本を巻く。更にその上にシンテゥロン・ボルシタスドと呼ばれる飾帯を付ける。これは色々のクロス・ステッチとブランケット・ステッチ、毛糸の房で飾った8.5cm平方の布を8枚づつ、糸で連ねたもので、紅と緑の2組を腰回りに付ける。左右にモラルと呼ぶショルダー・バッグを2個づつ掛けるが、これも白と焦げ茶の両面織と白地に赤のクロス・ステッチをしたものである。帽子は木の繊維で編んだ広いつばのもので、赤いウール地の十字模様と色毛糸の房が飾られている。


左 男性用上衣
 (カミサ・ラワレロ)

右 女性用カミサとファルダ

展開図は女性用カミサ

田中千代講演
「民俗衣装に見る袖の構造」の中の一つ 
ズボン (カルソン・サベレス) ケープ (カーパ) 帯 (ファハ)
帽子 紐 (シンタ) 帯 (ファハ)
飾り帯
 (シンテゥロン・ボルシタスド)
ショルダーバッグ (モラル) モラル
シンテゥロン・ボルシタスド モラル モラル


メキシコ (Mexico)
オワハカ洲 テオティラルパン クイカテコ族

(1958年収集)

[衣装名] ウィピル
木綿、平織とからみ織の地に幾何学模様の縫取り織と刺繍

三枚接ぎ

メキシコ (Mexico)
オワハカ洲 コパラ トゥリケ族

(1961年収集)

[衣装名] ウィピル
木綿地に毛糸の縫取織
三枚接ぎ、腋の下と裾で縫われている、


メキシコの衣服と祭具