田中千代・民俗衣装・コレクション

フランス (France)
ブルターニュ地方, ポン・タヴェン (Pont-Aven,Bretagne)







(1960年収集)

[衣装の構成]
上衣
 (コルサージュ corsage)
スカート
 (ジュップ jupe)
衿飾り
 (コルレット collerette)
ベスト
  (コルスレ corslet)
エプロン
 (タブリエ tablier)
頭飾り
 (コワフ coiffe)


 これはポン・タヴェンの衣服で、カンペルレ、ロスポルデンなどと並んでブルターニュで最も美しい衣装の一つである。特徴的なのは華やかなレースのコワフと美しい反りを描くコルレットである。コルレットはごく細い筒型の襞がぎっしりと畳まれていて、胸元のレースのガンプに続いている。コワフとコルレットは完全なプロポーションを保っているのである。
 ドレスは濃紺で、コルサージュ、コルスレ、ジュップの組合わせである。いずれも花模様を織込んだブレードや金色のブレードで飾られ、エプロンにはピンクの絹サテンが使われている。その配色がいかにもフランスらしさを出している。






フランス (France)
ブルターニュ地方、カンペール (Quimper,Bretagne)





1960年収集

[衣装の構成]
スカート
 (ジュップ jupe)
上衣
 (コルサージュ corsage)
ベスト
 (コルスレ corslet)
エプロン
 (タヴァンジェ)
頭飾り
 (コワフ coiffe)

 カンペールはブルターニュの西南部の旧コルヌーアイユ州の古都で、現在はフィニステール県の中心的都市である。

コルサージュは黒ベルベット製で長袖、胸元と袖口に数本の金色ブレードの装飾、コルスレは身体にぴったり合せて着用する。コルスレの特徴は裁断にある。肩に三角形のでっぱりがあり、後身頃に独特の切替線がある。
 黒のギャザースカートとピンクのタヴァンジェというエプロンの裾にも同様のブレード刺繍がバランスよく置かれている。ギャザー衿と同様の白レースのコワフは比較的小ぶりでリボンが後に垂れている。
 カンペール地区には黒ビロードにデザインされた花模様の金糸刺繍、或いは白サテンに銀糸刺繍を全体に施した豪華な盛装がある。コワフはいずれも同じ形であるが、リボン状の紐を胸元で横一文字に形作って回す使い方をしている(下図2点)


ベスト (コルスレ) 前 ベスト (コルスレ) 後 上衣 (コルサージュ)
スカート (ジュップ) エプロン (タヴァンジェ) ベルト



フランス (France)
ブルターニュ地方、ビグデン (ポー・ラベ) 

(1960年収集)

[衣装の構成]
ブラウス
 (ブルーズ blouse)
スカート
 (ジュップ jupe)
上衣  
 (コルサージュ corsage)
エプロン
 (タブリエ tablier)
頭飾り 
 (コワフ coiffe)

 ビグデンはBigoudenと綴られているがBegoudenと書いたほうがよいかも知れない。Begは尖っている事を表し、enは複数を示す接尾語である。これは地形を表していて、ポー・ラベ、ケリティ・パンマルクなどの地域をビグデンと言い、その地の人々、又、筒型のコワフもビグデンと呼んでいる。ポン・ラベの衣装は構築的な形をしている。筒型のコワフ、張りのある袖の付いたコルサージュ、釣鐘型のスカートの組合わせである。
 レース状にカットワークした筒型のコワフ、絹のエプロン、袖口にレース飾りの付いた白いシルクのブラウスが優雅さを添えている。
 この衣装の特色はコワフと、コルサージュの刺繍にある。衿ぐりから胸元にかけて、又、巾広の袖にも同心円を描くように、雄羊の角、棕櫚の葉、太陽などをモチーフとした連続模様が金色のコード刺繍、オレンジやレモン・イエローの絹糸刺繍で埋められていることである。

コワフの図案のモチーフ
左、コプラの頭の模様
右、ペルシャ風のチューリップの模様


フランス (France)
アルザス (Alsace)

[衣装の構成]
ブラウス
 (ブルーズ blouse)
ジャンパースカート
 (ジュップ・コルスレ jupe-corslet)
胸飾り
 (ピエス デストマ piece d'estoma)

 (コル col)
エプロン
 (タブリエ tablier)
頭飾り

(インターネットで表示出来ない文字がある)。


 頭に巨大な蝶結び、赤のギャザースカート、黒のベストや胸飾り、白のブラウスに黒のエプロンの組合せが現代のアルザス地方の代表的な民俗衣装となっている。しかしこの巨大なボーはアルザス全域に見られるものではなく、ストラスブルグ Strasbourg, サヴェルン Saverne, アグノ Haguenauの地帯に限られ、1871年ドイツの領土になった後、ドイツに対して反動的態度を表すものとして喪の黒い大きなボーとなり、三色旗にちなんだ三色のコカルド(帽章)をつけることになった。 
 ボーの付いたコワフをかぶることは19世紀始めから既にアルザスの市民階級の女性のもので、1815年頃に後にあったボーが前にきて大きく結ぶようになった。黒はプロテスタント、赤や他の色、柄はカトリックということで地域的にも結び方は異なっていた。スカートについても同様、宗教上、カトリックは赤、プロテスタントはグリーンやブルーと決められていたものの、地域によって幾分異なった衣装があった。尚、アルザスには16世紀頃からバンドゥル bandel というティアラ型の豪華な冠物があった。絹や金銀の刺繍が施され、階級制度の厳しいこの地方では、身分の高い人のみで被られていた。


フランス (France)
コワフ (Coiffe 頭飾り)



     ポン・タヴェン ビグデン       カンペール
トレゴールのコワフ    サンブリオのコワフ ロスボルデン   ドアルヌネ
 


 コワフは麻、木綿、レースなどで出来ている女性用の被り物。語源はラテン語のcófea(兜)、ゲルマン語のkufiaと言われている。宗教上の理由や髪の保護などを目的とし、実用的、あるいは装飾的な被り物として中世以来用いられてきた。
 フランスでは、ノルマンディー、ブルターニュ、アルザス、プロバンスなどの各地方に民俗衣装の一部としてコワフが残っている。
 現在では宗教的な儀式、お祭り、婚礼など個人的な行事に使われている。
 ブルターニュ地方では、五県ある中で特にフィーストテール県とモルビアン県に豊富で変化に富み、町、村、地区によって、それぞれ特有のコワフを持っている。コワフは世代から世代へと受けつがれているが、時代や流行によって形や大きさは変化している。



フランスの衣服
(コワフ他アクセサリー含む)